硬派な都市経済学の良書

年収は「住むところ」で決まる 雇用とイノベーションの都市経済学

年収は「住むところ」で決まる 雇用とイノベーションの都市経済学

エンリコ・モレッティ

プレジデント社

本体2,000円+税

ISBN:4833420821

学歴や技能よりも、地域間の格差によって年収が決まってしまう。ということをデータを元に明らかにした論考。的確で刺激的な内容だ。

ITやソフトウェア、ライフサイエンスなどのイノベーション事業を展開するハイテク企業は、地域の雇用に大きな影響を及ぼす。本書によると地域に拠点を構えたハイテク企業一つにつき、別の雇用が五つも生まれるという。こうしたイノベーション産業における雇用の創出効果は、従来の製造業の三倍にものぼる。さらにイノベーション企業は他のイノベーション企業を引き寄せ、集積する傾向にあるため地域間の格差は広がるばかりである。ヨガインストラクターの雇用が生まれる件は絶妙にわかりやすい例であり良いフックになっている。

地域経済の発展に重要なのは雇用の創出なのだ。
ベルリンは文化的で福祉も充実しており「世界有数のクールな都市の一つ」であるが、失業率が極めて高い。文化的な成熟が経済面に及ぼす影響は大きくない。雇用を生み出さないからである。ベルリン市長も自嘲的に「貧しいけれどセクシー」な都市であるとしている。ベルリンはハイテク企業の集積地では無いのである。

地域間格差はもちろん失業率にも表れていて、本書ではその対応策として移住コストの削減を提言している。移住クーポンなどを発行して労働者が衰退した地域から発展した地域へと容易に移住できるれば失業率の低下につながるのではないかと。

日本でもIT企業を誘致する神山プロジェクトなどの動きがあったり地域再生を考える上でも役立つのではないか。また移住に関しては地元意識の高いわれわれ日本人(マイルドヤンキー)にそのまま当てはめるのは難しいが、個人レベルでは一つの手段ではあるなと納得した。

今後も様々な議論に引用されるであろうデータと文章に満ちている良書である。
2014.06.12 / 担当:ノルテ店 新井 /